マスカテル ムスク

マスカテル ムスク

「ダージリンの最高峰はマスカテル」とよく言われます。
「マスカテルフレーバー」という言葉も良く使われます。
が、この「フレーバー」という言葉が日本では大きな誤解を生んでしまいました。

「マスカテルフレーバー」とは、マスカットの香りのする紅茶ではありません。

「2007年にコルカタ(旧カルカッタ)の取引先を訪問したときに、インドでも著名なティーテイスターのサジャンカイタン氏に、「これが今年最高のマスカテルだ。」というダージリンセカンドフラッシュュを飲ませていただきました。
その紅茶は、「えっ!これが今年最高のマスカテル??もっと良い香りの紅茶はいっぱい有るぞ!?」と言った感じの紅茶でした。
そこで質問をぶつけてみました。
「Is the meaning of MUSCATEL aroma? Or is it the taste?:マスカテルとは、香りのことか、味のことか?」

返事はこうでした。
「both! : 両方だ!」
そうなんです。日本人は香り付けされたフレーバーティーのイメージから、「フレーバー≒香り」と思い込みがちなのですが、「flavor」とは、「風味」の事であり、香りだけでは無く、味も含めた意味なのです。
そして実際には、「Muschatel」に関しては「味」の意味合いの方が強いでしょう。
「Muschatel」を辞書で引いてみると、「マスカットブドウから作った甘口ワイン」と書かれています。(プログレッシブ英和中辞典)現在のワインで言えば「ムスカ」の事かもしれません。
現実に飲ませていただいた「今年最高のマスカテル」は、香りはさほどでもない代わりに凄く力強いボディーを持っていました。まさにワインのような味わいでした。

「フルボディ」と呼ばれるどっしりとした味わいの紅茶が、本来の「Muschatel」と呼ばれる紅茶なのです。
しかし、イメージ先行は現実のグレードの付け方にも影響し、ボディーの弱い紅茶でも少し香りがよければ、「Muschatel」と付けられることが多くなってきました。
そんな頃からか、リンアンでは、「Muschatel」と書かれた紅茶をあまり買わなくなって来ました。
リンアンは名前では無く、「本当に美味しいか」で紅茶を選んでいます。

ちなみに、「MUSK」とは本来、香料に使われる「麝香:じゃこう」の事で、そこから転じて、「素晴らしい」の意味で使われます。
ですから、「マスクメロン」は「素晴らしい味のメロン」を意味する言葉であり、「マスカット」は素晴らしい味のブドウを意味する言葉として名づけられました。

付けられたグレードの名前では無く、ご自身の舌と鼻で十分味わって、お好みの紅茶を見つけてください。
誰がなんと言おうと、ご自身の好きな紅茶が最高の紅茶なのですから。