紅茶の発酵

お茶、紅茶、烏龍茶の発酵とは

紅茶は、「発酵茶」と呼ばれます。烏龍茶は、「半発酵茶」。緑茶は、「不発酵茶」。
では、お茶の世界の「発酵」とは、どんな現象、どんな化学反応のことでしょうか?
お茶を発酵させているのは、どんな菌なのでしょうか?

実はお茶の発酵には、菌:微生物が関与していません。
実は、「お茶の発酵」は、「発酵と呼んではいけない」レベルの化学反応なのです。

では、なぜ「発酵とは呼んでいけないレベルの化学反応」を「発酵」と呼んでいるのか?

「発酵」と呼ばれている化学反応を微生物が行っていると証明したのは、フランスの科学者 ルイ・パスツールで、1857年乳酸菌による乳酸発酵を、1860年酵母によるアルコール発酵を証明しています。

これ以前は、発酵とはどんな化学反応か分からなかったため、「どうしてそうなるか分からないけど、置いておくと違う物質になっている。」という現象に対して「発酵」という言葉を使っていたはずです。
イギリス人が自ら紅茶を作り始めたのは、1830年代半ば、アッサムジャイプール茶園で実験栽培を始めた時です。
これはパスツールの証明より20年位前の事です。当然、「発酵は微生物が関与している」という定義自体が無かったわけで、その当時の用語で言えば明らかに、「発酵」なのです。

「発酵」という言葉の定義が、パスツール以降にどんどん狭くなり、紅茶の発酵は、現在、発酵の定義から外れるようになってしまった。という事ですね。

世界では、「発酵:Fermentation」から、「酸化:Oxidization」という用語に変わりつつあります。
日本語では、「酸化重合」と言うのがいいのでしょう。
とは言っても、関税の税率が記載されている輸入統計品目表(実行関税率表)でも、「発酵」と書かれていますから、日本では「発酵」は正式な呼び方です。

では、どんな反応が起こっているかといえば、お茶のタンニン(カテキン類)が、お茶自身が持っている酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ)によって酸化重合され、テアフラビン、テアルビジンといった紅茶の成分に変わることを、お茶の世界では「発酵」と呼んでいるのです。

時おり、「紅茶は完全発酵茶」と書かれている事が有りますが、これは間違いです。
紅茶の発酵度は茶園マネージャーによって完全にコントロールされており、茶園マネージャーは世界の紅茶市場の動向を頭に入れながら、そして茶葉の状態を見ながら発酵をコントロールし、発酵を途中で止め、様々な風味の紅茶を作り出しています。

その中には、緑茶と間違えられるほどの紅茶も多く存在し、「紅茶と緑茶の発酵度さえ重なっている。」という研究者もいるくらい紅茶の発酵度は多様性を持ち、紅茶の世界にも多種多様な紅茶が存在しています。

是非、その多様な紅茶の世界をお楽しみください。