離婚しました

お店のホームページに私事の発表で非常に申し訳ないのですが、4月1日付で私達は離婚いたしました。(Aprilfool)

離婚理由は、「性格の不一致」です。

ミルクが先か、紅茶が先か、という極めて重要な点で性格の不一致が露呈したため、協議の上、この度、離婚する事になりました。

話すと長くなるのですが、重要な事ですので話させていただきます。

2003年6月24日 イギリスの王立化学協会が正式なプレスリリースを出しました。
そのタイトルは、『 How to make a Perfect Cup of Tea 』「一杯の完璧な紅茶の淹れ方」。
この中に「牛乳は紅茶の前に注がれるべきである。」と書かれていますが、これは王立化学協会が正式にプレスリリースしたジョークです。
イギリスの代表的作家ジョージオウエルの生誕100周年の記念してオウエルが書いた「A Nice Cup of Tea」というエッセイに呼応して書いたジョークです。
https://liyn-an.jp/wp/archives/67
https://liyn-an.jp/wp/archives/98

このミルクが先か(MIF:Milk in First)、ミルクは後か(MIA:Milk in After)というのは、統計学上で非常に有名な命題なのです。
現在、ほぼすべての科学的な証明は、ランダム化比較試験(RCT) randomized controlled trial と呼ばれる手法によって統計学的に処理されてその正確さが判断されます。
例えば医薬品が実際に効くかどうかの治験は、本当の治験薬と、プラセボと呼ばれる偽の治験薬を投与する医師にさえ分からないようにしてランダムに投与され、統計学的な処理によってその効果が判断されています。

実は、このミルクが先か(MIF:Milk in First)、ミルクは後か(MIA:Milk in After)というのは、世界最初に行われたランダム化比較試験(RCT) randomized controlled trial だと言われているのです。

このランダム化比較試験(RCT) randomized controlled trial を提唱したのはイギリスの統計学者で「現代統計学の父」と呼ばれるイギリスのロナルド・A・フィッシャー という統計学者です。
1920年代フィッシャーと友人たちが午後の紅茶を楽しんでいた時、ある婦人が「紅茶を先に入れた場合とミルクを入れた場合と味が違うからすぐに分かる。」と言ったそうです。
そこでフィッシャーは夫人に見えない場所でミルクを先に入れた紅茶と、後から入れた紅茶を用意して、どちらの紅茶かを当てさせ、それを統計学的に計算したそうです。
それが世界最初のランダム化比較試験(RCT) randomized controlled trial だと言われています。
その詳細を知りたい方は、西内啓先生が書かれた『統計学が最強の学問である』という本に詳しく書かれていますので、是非お読みください。
因みに、その夫人は全て当てたようです。

と言っても、私は、「それって、n=1 でしょ。(笑)」と思ってしまうのです。^^;;

例えば、10個を全て当てたとしても、たまたま10個当たったのかもしれない。
それを10回繰り返してどれだけ当たるか検討しなければほんとじゃ無いでしょ。と思ってしまうのです。

というのは、こういう経験が有るからなのです。

愛知県食品工業技術センターで紅茶の保存試験を行っていたことが有ります。

A:真空パック+冷凍保存
B:真空パック+常温保存
C:脱酸素剤+常温保存
D:開封

の4種類の保存方法で保存した紅茶を、約20名の方々に飲み比べていただいて、ランダム化比較試験(RCT)の手法でデータを取っていました。
比較試験は、3点比較法 と呼ばれる比較法です。

例えば、AとBを比較します。
AとBを3つのカップに入れます。
すると、2つのカップは同じ紅茶で、一つのカップが違う紅茶となります。この違う紅茶がどれかを当てるのです。
これを多くの被験者で行うと、その差がどれくらい大きいのか数値化が出来るのです。
2つが明らかに違えば全員が正解します。
その差が殆ど無くても、1/3の人は正解します。
つまり、何人試験して、何人が正解したかによって、その味の違いが大きいのか小さいのかを数値化出来るのです。
この3点比較法で、紅茶の保存法の違いによる紅茶の味の変化の差を追いかけて行ったのです。

B:真空パック+常温保存 を基準に、B vs A、B vs C、B vs D の 組み合わせで味の違いの大きさを調べていきました。

1か月目、凄い人が居ました。
B vs A、B vs C、B vs D この全ての試験で全問正解したのです。
その方は愛知県食品工業技術センターでも味覚の感覚が特に優れていると言われている方でした。
「これは、1ヶ月でも僅かな違いが出てるかも。」と期待したのです。

2か月目、その方は、またすべての組合せに正解したのです。
「これは凄い。これは明らかに保存方法によって味の違いが出てきている。」と期待しました。

3か月目。その方は....  全部外されました。^^;;

ま、そういう事です。そのレベルで偶然は有るのです。

ですから、いくら「現代統計学の父」と言われるフィッシャー先生が行った実験でも、n=1:たった一人の試験では、私は信用する事が出来ません。

で有れば、私がもっと大規模なランダム化比較試験(RCT)をやってやろうじゃないか、という事になった訳です。

そこで、秘密裏に(試験を行う事が漏れて、紅茶好きが集まってしまうと一般的な結果とは言えなくなってしまうため)100名の方にご協力いただき、ミルクを先に入れたミルクティーと、ミルクを後から入れたミルクティーを、この3点比較法で飲み比べていただきました。

使用した茶葉は、アッサム908、ウバハイランド茶園、ラガラ茶園の3種類です。

これらの紅茶を MIF、MIF で淹れ、それらをを3つのカップに入れて、「違うのはどれですか?」と答えていただき、「MIF とMIA の味の違いがどれくらい大きいか?」そして、「どちらが好きか?」も答えていただきました。
つまり、「MIF、MIAでどれだけ味の違いがあるか?」を数値化し、そしてその違いが大きかった場合は、「MIF と MIA のどちらが本当に美味しいのか?」を調べる、という実験を行ったのです。

結果、正解率は以下の通りでした。

アッサム908 47.8%
ウバハイランド茶園 45.6%
ラガラ茶園 46.3%

そして正解者(飲み比べが出来たかもしれない方々)の内、MIF を好む人と、MIA を好む人の割合は、ほぼ半々だったのです。

つまり、「ミルクが先か、ミルクが後かでその味は若干の違いがあると推察されるが、そのどちらが美味しいか、は、人の好み次第である。」と言えるという結果でした。

さて、問題はこの後です。

私達夫婦もこの100名に紛れて審査を行っております。
もちろんの事、プロですから、MIA、MIF の判別は、全て正解しております。
ま、当然です。これくらい当てられなければ、とてもプロとは言えません。

ところが、MIA を好むか、MIF を 好むかで大きな違いが出てしまったのです。

私はミルクが先の方が美味しいと感じましたが、妻は、ミルクが後の方が美味しいと感じることが判明したのです。

つまり、「性格の不一致」です。

何事も一緒で無いと気が済まない私達にとって、それも仕事上での、紅茶の味に関する不一致は非常に大きな問題でした。

という事で協議を重ねた結果、本日、4月1日未明、尾張旭市役所 宿直室に離婚届を提出し、正式に協議離婚が成立しました。

なお、妻:堀田温子は、「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出しておりますので、旧姓に戻ることなく、今後も「堀田温子」と名乗ってまいります。
住所も変える事を予定しておりません。現在と同じ住所に居住してまいります。
離婚はしておりますが、生活は今後も一緒に行ってまいります。
法的には、「  内縁関係 」 という事になります。

ま、早い話、「同棲」です。^^;;

付き合い始めてすぐに結婚してしまいましたので、恋人時代がほんとに短かったんですよぉ。
という事で、実質、これまでと何も変わっておりませんが、夫婦関係を解消し、これからは恋人どおしとしてこれまで以上に いちゃいちゃと、仲良く過ごしてゆきますので、今後ともよろしくお願いたします。

もちろんですが、これはエイプリルフールです。