ジャンピング
の 重要性

その1

その2

その3

その4


Talking ofTea
(原文
)

 

紅茶の抽出における ジャンピング の重要性について    その3

「ジャンピングの重要性」についてのお話も佳境に入ってきまして、 今回は、そのの3回目です。


前回は、

★ジャンピングの動きは、対流で動くだけじゃない★
★ハックスレーさんは「循環」と書いて「対流」とは書いてない ★
★浮いた茶葉にお湯が染み込んでお湯と同じ比重になった時」が、 ジャンピングの必須条件★
★水でも、沸かしすぎのお湯でも、実はジャンピングしている。 お湯の浸透速度が大きく違い、その時間が長すぎたり、短すぎて ジャンピングに見えないだけ★
★ジャンピングの動き自体は必要ないが、お湯の浸透速度の違いを はっきり見せてくれるジャンピングは、指標として非常に重要★

というお話をしました。


今回は、「ジャンピングはお湯の浸透速度だけでなく、直接。味に 影響させる要因の指標にもなっているんですよ。」というお話です。


皆さん、「美味しい紅茶を淹れるためには、空気をたくさん含んだ お湯が大切。」とか、「たくさん空気を含んだ方が美味しい。」と いう話を聞いたり、読んだりしたことがありますよね。

これって、本当でしょうか?

時には、「空気」でなく、「酸素」と、その成分をはっきり限定し て書かれていることがあります。

例えば、イギリスのティーカウンシル(紅茶委員会)のホームページ の「How to make the perfect brew: 完璧な抽出方法」
http://www.teacouncil.co.uk/newtc/cate/brew.htm にも、

> In order to draw the best flavour out of the tea the water
> must contain oxygen, this is reduced if the water is
> boiled more than once.

お茶から最も良い味を引き出すために、水は酸素を含んでいなくて はなりません、もし水が一度ならず沸かされるなら、これは減少し ています。
(コリャ英和! Ver.4.0 訳:珍しく一発でちゃんと訳せた。)

と言うように、「oxygen: 酸素」と書かれています。


でも、どうして酸素なんでしょうか?

某、公共放送の番組では、「茶葉に空気が付いて対流が起こり美味 しい紅茶に必要なジャンピングが起こる。」と説明していました。

それならば、「酸素」である必要は無く、「空気」のはずです。

どうして、「酸素」なんでしょうか?
本当に「酸素」なんでしょうか?

空気の成分の78% は「窒素」です。ですから「窒素」の影響の可能 性も有るんですね。
「窒素」は一般に不活性で、化学変化を起こしにくいですから、窒 素が紅茶の美味しさを変化させるとは思いにくいですが、逆にその 不活性を利用して、嫌気性処理として使い、通常起こる反応を押さ えることで、結果的に通常とは違う紅茶になる可能性も有るんです ね。

それとはちょっと違いますが、血圧を下げると言われているギャバ ロン茶はその窒素の嫌気性を利用してお茶を変化させているんです。
http://www.jafra.gr.jp/tushida.html

というお茶での実例も有るように、窒素が紅茶の美味しさを変えて いる可能性はあるのです。
ちなみに、ギャバロン茶の味はぁ....。私は好きじゃ無いです。^^;


空気の成分の約78%が窒素だということは説明しましたが、酸素は約 21%、そして残りの多くが アルゴンガス 約0.9%で、二酸化炭素は、 約0.03%と、ほんの少しです。

でも、このほんの少しの二酸化炭素によって、水のpH(酸性度、 アルカリ度)が大きく変わることは良く知られています。

水は、沸騰させると、どんどん空気が抜けていきます。
当然、空気の成分である二酸化炭素もどんどん抜けていきます。
そのために、沸騰させ続けていると、お湯の性質は、中性からどん どんアルカリ性へと変わっていきます。

「 紅茶の実験室 Liyn-an Tea Club 」での測定結果を示しておきま すね。
      沸騰していないお湯                       pH = 7.8
      沸騰したてのお湯                         pH = 8.3〜8.5
      沸かしすぎのお湯 (約10分間沸騰させた)  pH = 9.0〜9.2
これは一つの実験データに過ぎません。その日の水道水の状態や、 様々な条件によって値が変わるデータです。でも、実際に測定した データです。

このように、二酸化炭素によって、明らかに水の性質が変わってい くのです。
ですから、今まで注目されていなかった、0.03%の二酸化炭素こそが、 紅茶の美味しさに大きく関係しているの可能性も大きいのです。


そこで、「 紅茶の実験室 Liyn-an Tea Club 」では、沸かし抜いて 空気を殆ど抜いたお湯に、改めて、空気、酸素、二酸化炭素の3種 類のガスを吹き込んで、酸素比率の高いお湯、二酸化炭素比率の高 いお湯を作り出し、紅茶を淹れて飲み比べてみました。

これだけの実験では、どれだけの気体成分がどのような比率で入っ ているのか測定できませんし、官能検査の被験者数も少ないですか ら、正確なデータは出せませんが、だいたいの傾向だけは判るはず です。

詳しい結果は「 紅茶の実験室 Liyn-an Tea Club 」のメールマガジ ンに書かれていて、ここにおありますので、こちらをご覧ください。
http://liyn-an.com/tea_room/mag/club-bak/m0000026.htm


だいたいの感じを言えば、抽出後も、紅茶の空気成分はどんどん変 わりますから、味自体も時間と共にどんどん変わっていきます。

特に変化の速いのは二酸化炭素でした。

でも、沸きたての新鮮なお湯で入れた美味しい紅茶に近いのも、二 酸化炭素を吹き込んだ紅茶です。

一方、酸素を吹き込んだお湯で淹れた紅茶は、どんどん渋くなって いきました。

二酸化炭素の場合は、入ったり抜けたりして味が戻るような感じも あるのですが、酸素の場合は成分を酸化させ、固定してしまうよう な感じで、一旦渋くなると元には戻らない感じです。


この結果だけでは、何が紅茶を美味しくさせているのかは判りませ んでした。

でも少なくとも、酸素は紅茶を美味しくさせるのではなく、非常に 渋くさせていると思われます。

ただ、この渋さは、ミルクティーには非常に良くあうのですね。 最後に酸素を吹き込んだお湯で淹れた紅茶をミルクティーにしてみ たのですが、非常に美味しいミルクティーが出来ました。

という事は、ミルクティーが基本のイギリスでは、ティーカウンシ ルのホームページにある
------------------------------------------------------------
> In order to draw the best flavour out of the tea the water
> must contain oxygen, this is reduced if the water is
> boiled more than once. 

お茶から最も良い味を引き出すために、水は酸素を含んでいなくて
はなりません、もし水が一度ならず沸かされるなら、これは減少し
ています。
------------------------------------------------------------
という表記は、非常に正しい表示です。

でも、ストレートティーの方が多い日本では、やはり、美味しい紅 茶に必要なのは「空気」と言うべきでしょう。


ともかく、この実験でよく判ったことは、紅茶の美味しさは、含ま れる空気の量によって大きく左右されるということなんです。


そして、やはり一番美味しかったのは、ストレートの場合、沸かし たての新鮮なお湯で淹れた紅茶でした。


これは有る意味、当たり前のことです。

前々号に書きましたよね。
どこの茶園でも、どこのいティーオークションでも、「沸かしたて の新鮮なお湯」でテイスティングしているのです。
つまり、沸かしたての新鮮なお湯で一番美味しいように紅茶は作ら れているのです。
だから基本的には、沸かしたての新鮮なお湯で淹れるのが、一番、 美味しいのです。


でも、沸かしたてでも、沸かす前の水に空気が少なかったら?

きっと、沸かしたてのお湯でも、お湯に含まれている空気の量は少 ないでしょうね。

それを一定にするには....。
最初に飽和するまでたくさんの空気を含ませておくのが1番の方法 ですよね。

だから、沸かす前の水にたっぷりの空気を含ませんるのが大切なん ですね。沸いたときに一定の空気の量になるように。

そして、その空気の状態を判るように見せてくれているのが、ジャ ンピングという現象なのです。


どうです。
その動き自体が必要では有りませんが、抽出速度と、味自体に直接 影響するお湯の中の空気の状態を明確に見せてくれるジャンピング。
とっても重要な指標でしょ。


お寿司は、ご飯に酢をいれて美味しくします。
当然、そこにリトマス試験紙を入れればリトマス試験紙は赤く変色 します。でも、当然ですが、リトマス試験紙が赤くなることで、お 寿司が美味しくなるわけではないですよね。
酢が適量入っているから美味しいんですよね。

ジャンピングとは、そういう意味で非常に重要なのです。
適量の空気を知るために。


でも、茶園マネージャーは、けっしてジャンピングを見ながら紅茶 の味を決めているのではありません。沸かしたての新鮮なお湯で味 を決めています。

だから、世界中の紅茶業界で言われている「沸かしたての新鮮なお 湯」が、一番大事なのです。



さて、ジャンピングの重要性については、一応の結論まで書きまし たが、このハックスレーさんの本には、美味しい紅茶を淹れるため の、いろんな面白いことが書かれていますから、次回はジャンピン グの記述の前後を読んでみましょうね。

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