ジャンピング
の 重要性

その1

その2

その3

その4


Talking ofTea
(原文
)

 

紅茶の抽出における ジャンピング の重要性について    その2

さぁ、「ジャンピングの重要性」についてのお話の2回目です。

前回は、

★「ジャンピング」というのは、日本だけの紅茶用語★
★世界の紅茶関係者が重要視しているのは「沸かしたてのお湯」★
★ハックスレーさん自身もジャンピングしたから美味しいとは、言っていない。★
★茶葉によって、茶葉が全部沈んでからも蒸らした方が美味しい★
★ハックスレーさんの実験だけでは、「沸かしたてのお湯」が1番 かどうかは判らない★
★でも、「沸かしたてのお湯」がいい事は、世界中の紅茶関係者が体験的に知っている★

というお話をしました。

では、今回は、「じゃぁジャンピングっていったい何なの?」というお話をします。



    『 ジャンピングはぁ・・・・  何故起こるのか?』
                     ・
                     ・
                     ・
                     ・
                     ・
                     ・
                     ・
   m(_ _:)m          ・

           ごめんなさい。何故起こるのか。私には判りません。

m(_ _:)m

よく紅茶の本には、
「しばらくすると対流が起こり・・・・。」

と、書かれています。
でも、本当に対流でしょうか?

対流とは、熱の作用によって温まった気体や液体が浮力の作用で上 に上がり、冷めた液体や気体が下に下がっていく現象です。

ですから、基本的に対流は、一方通行で起こるはずです。

          ┌←┐┌→┐
          ↓  ↑↑  ↓  こんな感じですよね。
          └→┘└←┘  もう少し、丸い感じで回りますが。^^;


いろんなポットや、ハックスレーさんのようにグラスなどでジャン ピングを観察しているのですが、このような一方通行的な動きは少 ないように感じています。
確かにこのような一方通行的に動くこともありますが。

でも、多くの場合は、浮かんでいる茶葉のすぐ横で、ある茶葉は沈 み、その茶葉がまた同じところで浮かんでいくのです。
沈みかけた途中でまた浮かび上がっていく茶葉を見ることも多いで すよね。

           ↓ ↑ ↓↑ ↓
           葉 葉  葉  葉  こんな感じですよね。
           ↓ ↑      ↓  実に神秘的です。


極稀なジャンピングですが、線香花火のように突然、パッ、パッ! と、四方八方に、不規則に動くジャンピングも有るのです。

         葉─    葉
               /    ─葉
           葉      葉     /
             \  /     葉    こんな感じかな?
         葉─       \        上手く書けません。m(_ _:)m
                /    葉      まるでブラウン運動のようです。
              葉


これらの動きを見ていると、私にはその主原因はどうしても「対流」 とは思えません。

この様々な動きを完全に解明するには、有限要素法のプログラムを 使い、大型コンピューターで解析しなければ解明できないでしょう。
きっと。

さて、ハックスレーさんがどう書いているかを見てみましょう。
ここは、正確に見るために、原文から見てみます。
http://liyn-an.com/tea_club/20/jumping_tea.html#03E

> But in the glass in which freshly boiling water was used
> about two-thirds of the leaves immediately float to the
> top and the leaves circulate from bottom to top and top to
> bottom until after about three minutes all the leaves sink
> to the bottom.

私の訳文は、こうです。

> しかし、沸かしたてのお湯で入れたグラスでは、すぐに約2/3の茶
> 葉が上に浮かび、そして約3分後に全ての茶葉が底に沈むまで、
> 茶葉は底から上へ、上から底へと循環します。


対流は、英語では「convection」です。
http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%C2%D0%CE%AE&kind=je

でも、ハックスレーさんは、

> the leaves circulate from bottom to top and ....

「circulate」って書いていますよねぇ。

「circulate」は、「循環」です。
http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=circulate&kind=ej

例えば、血液は心臓というポンプによって、体中を循環します。
これはもちろん、対流ではありません。

対流は循環の一種ですが、循環(circulate) と、対流(convection) は、はっきりと区別されるべきものです。


ハックスレーさんは、その辺りもはっきり判っていて、「対流」
「convection」ではなくて「循環」「circulate」という言葉を使っ たのだと思います。

ハックスレーさんは、日本で「ジャンピング」と呼ばれている現象 を、「対流」だとは思っていないんですね。


では、このジャンピングは何故起こるのか?


それが解明できればぁ...博士号は確実だと言われたのですが。^^;


でも、確実に言えることがあります。


茶葉は基本的に乾燥され、多くの空気を含んでいます。
ですから、その多くの空気を含んだ状態では、必ず浮くはずです。

その茶葉が入ったポットに湯を注ぐと、すぐに空気が抜け、お湯が 染み込んで沈む茶葉も有れば、空気が抜けお湯が入り込むのに時間 がかかるために浮いている茶葉も有るのです。

そのため、茶葉の一部分が沈み、残りが上に浮くことになります。

そして、その
「上に浮いた茶葉にお湯が染み込んで(空気が抜けて)、お湯の比重 とほぼ同じ比重になったときにジャンピングという現象が起こる」
のです。

どういう動きをするかは別にして。


「上に浮いた茶葉にお湯が染み込んで(空気が抜けて)、お湯の比重 とほぼ同じ比重になった状態」

これがジャンピングの必須条件です。


それが時には対流に乗って動くことも有れば、お湯が静止していて、 静かに上下するときもあります。
沈む茶葉に引っ張られて、まだ軽い茶葉が沈んでしまい、途中でま た浮き上がることも有るのです。(対流であるなら、この途中で再び 浮き上がる動きは説明できません。)



この辺りから、ジャンピングの重要性が出てくるんですねぇ。^^;


ハックスレーさんも言っていますよね。
http://liyn-an.com/tea_club/20/jumping_tea.html#01J

> ここから、私達は、嗜好の世界から現実の世界へと入っていきます。
> なぜなら、充分に長い時間、出来る限り沸騰近くの新鮮なお湯に
> 触れていなければ、お茶の性質と香りは、乾いていた茶葉から引
> き出されないからです。

基本的に、茶葉とお湯が触れ合っていなければ、紅茶の成分は抽出 されません。

ところが、茶葉が浮いている状態は茶葉のなかに空気が残っていま すから、茶葉の全ての部分がお湯に触れているわけではないのです。


ですから、基本的には、殆どの茶葉が沈んだ状態にならないと、抽 出された状態とは言えないのです。

それが一番美味しいかどうかは別ですが。

つまり、ジャンピングは、抽出がどうなっているかの重要な指標
一つとなっているのです。

その動き自体が抽出に必要なのではなくて。



実は、ハックスレーさんの実験の「沸かしすぎたお湯(10分くらい 沸かし続けたお湯)」でも、ジャンピングは起こっているのです。


基本的には、乾燥状態の茶葉は水に浮きます。
それが「沸かしすぎたお湯」の場合には全て沈んでしまうという事 は、非常に速いスピードで茶葉にお湯が染み込んでいるわけです。

つまり、お湯を注いでその勢いで回っている間にジャンピングが終 わってしまっているわけです。

それなら.....。 と、お湯を注いでから、静かに茶葉を浮かべてみ ました。



するとぉ...。
すぐに非常に激しいジャンピングが起こったのです。

沸かしたてのお湯で起こるジャンピングより激しい動きのジャンピ ングです。
(お湯の状態によって、後から茶葉を入れてもすぐ沈む事もあります)


すぐ横で入れた「沸かしたてのお湯」のグラスは、「沸かしすぎの お湯」の激しいジャンピングが終わってから、やっとジャンピング が始まりました。良く見慣れたジャンピングです。


もし「ジャンピングが紅茶を美味しくさせる」のであれば、沸かし すぎのお湯の方が美味しいことになってしまいますよねぇ。^^;



「沸かしすぎのお湯では、もっと激しくジャンピングしている」
という事は、「沸いていないお湯でも、ジャンピングしている?」と、思いませんか?


これも実はジャンピングしているんですよ。


皆さんは水だし紅茶を作ったことがありますか?

茶葉によって違いますが、多くの場合、水だし紅茶が出来上がった ときには、ほとんどの茶葉が沈んでいますよね。

つまり、何時間の間には、「茶葉の空気が抜けて水が入り込み、茶 葉の比重が水とほとんど同じなった状態」というジャンピングの必 須条件が存在しているのです。


実際に水だし紅茶を作ってみてください。
http://liyn-an.com/makeT/irekat_mizu.html

ずぅ〜〜っと見ていると、時々ですが、一つの茶葉が沈んでいき、 また静かに浮かび上がって来るのが見えるはずです。

そのまま数時間、茶葉が全て沈むまで、ずぅ〜〜〜〜〜〜〜〜っと 見ていると、多くの茶葉の浮き沈みを見ることが出来るはずです。


これって、ジャンピングですよね。


結局、水だし紅茶では数時間をかけてジャンピングが起こるために、 一度に見えるジャンピングの茶葉は、1本見えるか見えないか、ぐ らいのため、今までそれをジャンピングと認識しなかっただけなん です。

つまり、沸かしすぎのお湯でも、全く沸かしていない水でもジャン ピングは起こっているのです。

ただ、お湯の沸かし方によって、お湯の茶葉への浸透速度が大きく 違い、その結果ジャンピングの起こる時間軸に非常に大きな差があ り、たまたま一番美味しく紅茶がはいる沸かしたてのお湯の場合、 3分間で非常に激しいジャンピングを見ることが出来るということ だけなんですね。


「お湯の茶葉への浸透速度」 なんて、お湯を見ただけでは絶対に分 かりませんよね。
でも、紅茶の美味しさに関係していることは容易に想像できます。

だから「お湯の茶葉への浸透速度」を実際によく見せてくれる 一つの指標として、「ジャンピング」は非常に重要なんです。


さて、話が佳境に入ってきましたねぇ。

でも、ジャンピングが教えてくれるのは、抽出の状態だけじゃない んですよ。ある程度味への影響も教えてくれている可能性が有るの です。
次回はそのお話をさせていただきますね。 お楽しみに。

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